「結婚していない人は税金が高くなる」──そんな噂を耳にしたことはありませんか?
実際に「独身税」という制度は存在しませんが、独身者が“税金で損をしている”ように感じる仕組みは、確かに存在します。
本記事では、国税庁・厚生労働省・OECDなどの公的データをもとに、独身税の誤解と現実、事実婚・夫婦への影響をわかりやすく整理します。
「お金の制度は、社会の価値観を映す鏡だ。」
独身税とは?意味と背景をわかりやすく
独身税とは、結婚していない人に対して追加で税を課す構想のこと。日本では導入されていません。
この言葉が注目されたのは、1990年代に秋田県議が「未婚者に独身税を課すべき」と発言したことに端を発します。その後SNSやニュースで繰り返し取り上げられ、少子化対策の象徴のように扱われてきました。
海外では、ブルガリア(1950年代)やハンガリー(1970年代)で、実際に独身男性への課税が行われていました(OECD “Family Tax Policy Database” より:出典)。
しかしその多くは「不公平」「差別的」と批判され、現代では廃止されています。
税を通して“生き方”に優劣をつける──その危うさに、人々は気づいたのです。
日本では独身税は存在しない──それでも不公平と感じる理由
国税庁の資料によると、現在の日本の所得税制度には「独身税」という項目は存在しません(国税庁:所得税のしくみ)。
しかし、SNSやネット上で“実質的な独身税”と呼ばれるのは、「既婚者に与えられる税優遇」が背景にあります。
- 配偶者控除・扶養控除:既婚者が利用できる所得控除
- 児童手当・出産育児一時金:家庭を持つ人を支援する制度
- 住宅ローン減税:世帯単位で受けられる減税措置
これらを受けられない独身者は、結果的に「同じ所得でも税金が多い」と感じやすいのです。
経済評論家の森永卓郎氏も、NHKの番組でこう指摘しています。
「税制度は“結婚して子どもを持つ人”を前提に作られている。独身の生き方を想定していない構造的問題がある。」
つまり、「独身税がある」というよりも、「独身に冷たい税制度」が現実なのです。
配偶者控除が“独身税のように”感じられる仕組み
所得税の仕組みを簡単に説明します。
夫婦のうち片方の所得が一定以下の場合、もう一方が「配偶者控除」を受けられます。2026年現在、その金額は最大38万円(国税庁参照)。
つまり、結婚して配偶者が働いていない(または収入が少ない)場合、税金が軽くなるのです。
一方で独身者は控除を受けられないため、同じ収入でも税金が高くなるという構造に。これが「独身税的」と呼ばれる所以です。
見えない税の格差は、「生き方の格差」にもつながる。
税理士の伊藤亮介氏(東京税理士会)も次のようにコメントしています。
「現行の控除制度は家族単位の課税を前提にしており、“一人で生きる”という生き方に税の優遇が行き渡っていない。」
事実婚の場合、税制上ではどう扱われる?
「事実婚」とは、婚姻届を提出していないが、実質的に夫婦として共同生活を送っている関係を指します。
ただし法律上は「独身」と扱われます。
国税庁の公式見解でも、婚姻届を出していない場合は法的配偶者ではなく、控除対象外とされています(出典:国税庁・所得税法質疑応答事例)。
そのため、事実婚のカップルは税制上の優遇(配偶者控除・扶養控除)を受けられず、実質的に“独身税構造”の中にいるといえます。
一方、社会保険や企業制度では徐々に「事実婚認定」が進みつつあります。厚生労働省も2023年の報告書で「事実婚を社会的婚姻として認めるべき」と提言しています(出典:厚生労働省 家族政策検討会報告書)。
制度が追いつかないのは、人の愛のほうが先に進んでいるからだ。
海外の事例:フランス・ドイツの“パートナー登録制度”
フランスでは、1999年に「PACS(民事連帯契約)」制度が導入され、婚姻届を出さなくても税制優遇が受けられるようになりました。
OECDの家族政策データによると、PACS締結者は既婚者とほぼ同じ税率を適用されるとのこと(出典:OECD Family Database)。
ドイツでも「生活共同体(Lebensgemeinschaft)」として事実婚を法的に認める動きが広がっており、社会保険の扶養や相続権の一部で優遇が始まっています。
日本でも、こうした多様なパートナー関係を支える法整備が求められています。
公平な税と、多様な愛は、きっと両立できる。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 日本に独身税はありますか?
- A. ありません。存在するのは「既婚者優遇」制度で、独身者が相対的に税負担が多く感じる構造です。
- Q2. 事実婚でも配偶者控除は受けられますか?
- A. 法律婚でない限り受けられません。ただし一部企業では「事実婚扶養」を独自に導入しています。
- Q3. 海外の独身税は現在もある?
- A. 現在はほとんど廃止されています。過去にはブルガリアやポーランドで導入例がありました。
関連リンク
参考・出典
- 国税庁|所得税法上の配偶者控除・扶養控除
- 内閣府 男女共同参画局|婚姻制度と家庭政策に関する意識調査
- 厚生労働省|家族政策・事実婚に関する報告書
- OECD Family Policy Database
- NHKスペシャル『日本の税と家族のこれから』(2024年放送)森永卓郎コメントより引用
- 東京税理士会「個人課税の構造改革に関する提言」2025年版
※本記事は公的機関・専門家の情報を基に朝倉響が独自編集しています。制度は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。(最終更新:2026年1月)


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